ネガティブな「部屋」の語感がポジティブに変化したのは、「家庭」家族が手どもたちに子ども部屋を与えるようになって以来のことであった。大正期の絵本、童話、童謡には、引き戸ではないドア、ベッドや本棚、オルガンがあって、カーテンが風をはらんでいる窓、窓際に吊るされた鳥籠には極彩色の小鳥がさえずっている部屋が登場した。暗く、寒い、ときには恥ずべき空間であった「部屋」が、楽しく、明るい、美しい部屋に模様替えである。
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だが、当時の子ども部屋は、まだ空想の世界の絵空事であった。「いろり端のある家」には、むろん子ども部屋はなかった。「茶の間のある家」の時代に、本物の子ども部屋を与えられていた子どもはごく少数であった。「茶の間のある家」の手どもたちにとっての贅沢空間とは、せいぜい廊下の端に置かれた机一つ、玄関脇に置かれたオルガンまたはピアノくらいのものであった。